青い雨 blue rain

香港 街角それぞれのストーリー

回想5 - 月夜

昔からヒーローものは好きだった、そして何より親父が警官だった。小さい頃は、町のみんなのために働き、みんなに尊敬されている親父に素直に憧れた。親父からは、警官になれと言われたこともないし、物心ついた頃からはまさか自分が警官になるとも思ってもみなかった。それは、 不器用で頑固、亭主関白な親父が休みなく働きまわり、たまに帰った夜には1人でソファに埋まりながらずっと眠たそうにテレビんみている姿をずっとみていたから。一緒に住んでいても、親父との思い出は数えるほどだった。だから、俺が警察? まあ成り行きだろう。今は彼女もいないし、幸いなことに仕事への情熱もない。こうして快適な宿舎にも住める。そう、だから警察。あれだけ反発していた親父と同じ道を歩くことになるなんて、まさに成り行きだろう。少しだけ残った缶ビールを苦々しく飲み干しベットへと向かう。寝室の窓の外には 高層建築群と九龍と新界をわける山並みがよく見える。少し蒸し暑い三日月が綺麗な夜だった。

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