青い雨 blue rain

香港 街角それぞれのストーリー

回想7- 六・十二後

金鐘 Island Shangri-la 56階 Horizon Lounge 。出されたコーヒーを飲みながらすこし外に視線を向ける。約束の時間よりだいぶ早く来てしまった。対岸の九龍半島を眺め、手前には香港政府新庁舎、すこし離れて香港警察本部建物が見える。初めて来た感じがしないこの場所の不思議な心地良さに時間をわすれ ただ窓の外に広がる爽やかな香港の朝を眺め続けた。

香港警察本部内に2つある食堂を管理していた支配人を昨日付けで辞めた。仕事は充実していたし、36歳の時に転職してもうすぐ2年たつところだった。デモ前夜の6月11日は夜勤だった。朝までに翌日の警官隊用の食事の準備を済ませ早朝帰宅。警官隊がデモ隊に向けて催涙ガス、ゴム弾等を発砲している場面をTVで見た。そして次の日、辞表を提出した。昨日TVをみてからいったん寝たそして少し泣いた。彼らのために食事を作る仕事、作っている自分、もうこの仕事はできないだろうと思った。だいたいの警官はごく普通の人で、彼らはいつも礼儀正しかった。いつも笑顔で挨拶してくれる人もいた、いい人たちだった。だけどやはり別の顔もするんだなと思った。善悪の話でなく、ただ単純に。食堂にいるときの顔と、現場にいるときの顔。いろんな顔。

 

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