青い雨 blue rain

香港 街角それぞれのストーリー

回想8- 被弾

かつて学校で教えていたときのある生徒がいる。警察を正しい方向に変えるために、警察に入るんだと私に熱く語ってくれた、まっすぐな目をした小柄な青年だった。そして、今日は2019年6月12日、長い間対峙している警官隊の中から鋭い視線を感じ、急にあの時のことを思い出した。今まさに私にむかってゴム弾の銃口を向けているのは彼なんじゃないかと思い始めたその瞬間、私はゴム弾で頭部を撃たれて地面に倒れこんでいた。撃たれた瞬間がフィードバックする、彼の表情まではよく見えなかったが目は合っていた。彼は私だと気づいて撃ったのだろうか。私を”暴徒”の一人として成敗したのだろうか。善だ悪だというつもりはない。まして私の立っている側が善で、彼の立っている側が悪だというつもりもない。ただ私は教育者として、彼に何を教えてあげられたのだろうか。これは私が彼に教えたことの結果なのだろうか。と少しばかり悔しい気持ちになる。組織の意向に沿っただけ、正義のため、問題を解決するため、自分たちが傷つけられそうだったから、他人を傷つけた。そういうことかもしれない。それはあまりに単純すぎる。世界はもっと複雑なんじゃないか、というとことを当時大人になっていた私たちが子供たちと一緒になって探ったり見せてあげたかったなと思う。それでも撃たれていたかもしれない。でも頭じゃなかったんじゃないかと思う。きっと空に向かって撃ってくれていたんじゃないかと。

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