青い雨 blue rain

香港 街角それぞれのストーリー

回想9-連絡

土曜だというのに今日はひとりモンコック、麺屋一京で静かにラーメンを食べている。麺の上に豪快に載ったチャーシューを頬張りながら携帯電話の画面をチェック、数十秒前にみた画面をまた無為にみている。朝からその繰り返し。よっぽど暇なのかSNS依存かかだ。いやそれもあるが、今日は特別落ちつかない。僕の彼女は警官をやっている。いつもwhatsappや電話で取り留めのない会話やチャットをしている僕たちだが、ここ数日は簡単なチャット程度以外ほとんどやり取りがない。テレビやネットでは頻繁に警官とデモ隊の衝突が報道され、警官も24時間現場配置、路上ですわったまま仮眠をとっている姿が報道されている。彼女も現場にいるのだろうか?昨日からは電話も繋がらないようだ。メッセージは既読になっているものもあるが、返信はない。大部分の報道、SNSのニュースでは、警官隊が圧倒的な装備と武力でデモ隊を制圧しているものが多いが、一部ではデモ隊が歩道のレンガを掘り返し、それを警官隊に投げているという話も聞く。現場に行って彼女の安否を確認したい衝動にも駆られるが、行けば行ったで僕自身がデモ隊の一部となり警官隊しいては彼女と対峙することになりかねない。彼女がどんな気持ちで警備についているのか?未だ聞いていなかったが、また落ちついたらそんな話をしたいもんだ。まずは無事に平和にことが収束していくことを望む。

 

また携帯の画面をみる。メッセージは無し。だが最新のニュースで行政長官が声明を出したようだ。条例改正法案提出延期。まずは、社会の安定、亀裂修復が最優先課題ということらしい、ひとまず真っ当な考えに安心する。ここにきて、法案どうこう以上に六・十二の警察の対応が問題視されている、そういった報道がふえている印象もあるので、まずは事態の収束を測りたいところだろうか。そこに彼女からのメッセージが ”今晩話したい。会える?”少し嫌な予感を感じつつ、”ok” とだけ返信。 すっかり冷えた切った麺とスープを無理矢理すする。

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