青い雨 blue rain

香港 街角それぞれのストーリー

挿話- 上街

朝からぐずっていた天気も昼頃になると少しずつ晴れてきた。初夏の太陽に明るく照らされた街には家族連れ、カップル、学生たちが溢れている、そのほとんどが黒いTシャツを着て白い花を持っている。MTR駅に向かって歩いている人波は家族連れ、小さな子供連れ…

回想9-連絡

土曜だというのに今日はひとりモンコック、麺屋一京で静かにラーメンを食べている。麺の上に豪快に載ったチャーシューを頬張りながら携帯電話の画面をチェック、数十秒前にみた画面をまた無為にみている。朝からその繰り返し。よっぽど暇なのかSNS依存かかだ…

回想8- 被弾

かつて学校で教えていたときのある生徒がいる。警察を正しい方向に変えるために、警察に入るんだと私に熱く語ってくれた、まっすぐな目をした小柄な青年だった。そして、今日は2019年6月12日、長い間対峙している警官隊の中から鋭い視線を感じ、急にあの時の…

回想7- 六・十二後

金鐘 Island Shangri-la 56階 Horizon Lounge 。出されたコーヒーを飲みながらすこし外に視線を向ける。約束の時間よりだいぶ早く来てしまった。対岸の九龍半島を眺め、手前には香港政府新庁舎、すこし離れて香港警察本部建物が見える。初めて来た感じがしな…

回想6- 再びデモ前夜

清水湾のビーチに寝ころびながら、家族連れ、カップルや若者グループが午後の一時を過ごしている光景を遠巻きに眺めている。そして、それぞれボーティングパーティが開かれているのであろう、沖には20艘以上のクルーザーが停泊している。平和な風景と本格的…

回想5 - 月夜

昔からヒーローものは好きだった、そして何より親父が警官だった。小さい頃は、町のみんなのために働き、みんなに尊敬されている親父に素直に憧れた。親父からは、警官になれと言われたこともないし、物心ついた頃からはまさか自分が警官になるとも思っても…

回想4‐ 離島

田舎の中学校時代の友人と香港に来ている。田舎をでて別々の大学にいった二人は時々、こうして旅行したりお互いの近況を報告しあったりしているわけだ。昔からいつも思うのは、この二人がつるむとどうしても主流の場所から別の方向へ流れていくそんな傾向が…

回想3‐ 人情の街

昨秋、田舎の祖母が亡くなってから髪を切っていないので、髪が肩にかかる位まで伸びてきた。それにここのところの初夏の湿気も影響してか癖毛がより渦を巻いて見た目にすごい状態になっている。髪を束ねず仕事にいく日などは、こんなにも私の顔を見る人が多…

回想2‐異国の異国

冬の休暇を日本で過ごす話はいつも計画倒れになる。家内いわく それは”寒い”からだそうだ。いつからか体調のこともあり冬の休暇は南国に行くことが定番になっている。バリ、マレーシア、タイ、ベトナム、カンボジア、ミャンマー、スリランカ、ドバイ。どこに…

回想1‐ 2014

先日、母からの電話であれが娘の生まれた年だったことに気づく。あれというのは2014年夏・雨傘運動。当時のあのストリートの熱気は今でもたびたび思い出す。自分たちの行動で社会が変わるんじゃないかという期待と、それにしてもどうせ何も変わらないだろう…

6月13日

MTRのF出口をでて空を仰ぐ、ああ今日も雨かあ。雨の季節、下水の臭いが入り混じった通りを歩いていると ああ香港に帰ってきたんだななぁと思う、シャツと靴はびしょびしょ、傘の群れをかきわけ とにかく前に進む。歩きながらふと数年前もこんな時があったな…